Movie Movie

Return Page

是枝監督作品2度目の受賞なるか!?
福山雅治、役所広司、広瀬すず、是枝裕和監督が参加!
「三度目の殺人」第74回ヴェネチア国際映画祭

2017年09月05日

「三度目の殺人」第74回ヴェネチア国際映画祭

<左から、是枝裕和監督、広瀬すずさん、福山雅治さん、役所広司さん、ルドヴィコ・エイナウディさん>

「そして父になる」から四年、二度目のタッグとなる福山雅治さん主演の是枝裕和監督最新作「三度目の殺人」。
この度、本作が第74回ヴェネチア国際映画祭 コンペティション部門に正式出品されたことを受け、福山雅治さん、役所広司さん、広瀬すずさん、是枝裕和監督が現地入り。更に本作の音楽を手掛けるルドヴィコ・エイナウディさんも加わり、記者会見、フォトコール、レッドカーペットに参加いたしました。
その模様を詳しくレポートいたします!


【公式記者会見】

Q:展開がスローな作品ですが、全編を通してスリル/サスペンスを持続するための秘訣は何だったのでしょうか?

是枝監督:
どの映画もだいたいスローと言われるのですが、今回も自分のペースで作っているので、特に何かをゆっくりしたというつもりはないんです。ガラス一枚隔てて向き合った男二人が言葉を交わさない時間、何かが止まって見えるその瞬間に、いろんなものが動いて見える。実際は動いていないのに、心の奥で何かが動いて見えるというものを、丁寧に丁寧にやろうと思ったので、もしかするとそれが影響しているのかもしれません。ただ、「止まって見える中で実は何かが動いて見える」というものをやりたいと思いました。

Q:エイナウディ氏を音楽に起用しようとしたきっかけは?

是枝監督:
エイナウディさんとは、今回とてもいいコラボレーションができたと思っています。きっかけは海外の映画祭を回っていた時に、たまたま飛行機に乗って聞いた曲が彼の曲で、音を聞いていたらすごく風景が浮かんだんです。特に、水、火、雪などですね。その時は名前が読めなかったのですが、メモして日本に戻ってアルバムを買い、今回は脚本を書きながらずっと彼の曲を聞いていました。なので、サウンドトラックをお願いしたというよりは、本の段階からこの音楽は絡まっています。すごく映画の中から生まれているような気がします。

Q:是枝監督と初めて会った時には、どのようにアプローチを受けたのでしょうか? どんな話をしましたか?

ルドヴィコ・エイナウディさん:
コンサートのために東京を訪れた時に、是枝組が撮影しているセットに招待されました。セットとは別の部屋で、編集中の映像を観せてもらったのが、この映画との出会いでした。もちろん台本は読んでいたし、是枝監督の作品も観てはいたのですが、この謎めいた物語に心惹かれ、すぐに夢中になりました。黒澤監督の名作「羅生門」にも通じると思うのですが、様々な視点から語られていて、何が本当なのか分からないんです。そこが面白いと思ったので、「最後の最後まで顕れない真実」というスピリット(テーマ)で作曲しました。

Q:今回の作品は、近年の是枝作品とは全く違った作風になっていると思います。どうしてジャンルムービーを撮ろうと思ったのでしょうか? どうしてスリラーを撮ったのでしょうか?

是枝監督:
観ていただいた方が感じたほど、新しいことをやった意識ではないような気がするのです。ただ、この10年ぐらいホームドラマを続けて、人間のデッサンを鉛筆で描いていたような意識なんです。今回は、やや「家」から「社会」へ視野を広げて、油絵で描くようなタッチを変えた作画をしているのですが、描く本人は変わらないので、変わっているところと変わっていないところがあると思います。

Q:どうしてスリラーだったのでしょうか?

是枝監督:
スリラーをやろうと思って最初スタートしたわけではないです。社会に目を向けた時に、人が人を裁くことについて考えてみたいと思ったことがスタートでした。日頃お付き合いのある弁護士さんと話をする中で、「法廷は真実を追求するところではない、利害の追及をするところだ」という一言を聞いたのが、今回のモチーフ、きっかけになりました。脚本作りも、実際の弁護士たちに入っていただいて、一緒に作っていきました。そういう意味では、自分の記憶、家族をベースにして書いていた(今までの)ストーリーの作り方とは違う作り方をしました。そして、それはとても刺激的でした。

Q:「そして父になる」はヴェネチアでも話題になりました。日本ではロックスターとしても有名な福山さんですが、今回も是枝監督から起用され、是枝作品の常連になりつつあると思います。今回は社会の襞をかきわけ、事件を捜査する役ですが、どういった心構えで臨んだのでしょうか?

福山さん:
僕自身、是枝監督、是枝作品のファンなんです。僕も音楽をやっているときはシンガーソングライターというスタイル、作詞、作曲、演奏、歌をしていますが、監督の映画作りの現場はすごく、手作り感があります。原案、脚本、監督、編集をやられていて、全ての工程を俳優として参加しながら、その現場を一番近くで見られるというのは僕にとってこの上ない贅沢な経験です。贅沢な経験であると同時に、すごく刺激を受ける現場です。是枝監督という一人の人間を通して、そして映画製作を通して、監督がどういう目線で、この人間社会と人間を見つめているのかというのを、知る機会を与えてもらっています。私にとって、自分の活動や表現をフィードバックできる現場に参加できることに、いつも感謝しています。

Q:是枝作品ではよく「親子の関係性」にも言及されます。広瀬さん、役所さんはどういった心構えでこの作品に臨んだのでしょうか?  

広瀬さん:
私は、10代だからこそ、少女だからこそ見える大人の言葉、行動、母への思いなど、いろいろなものを客観的に見ていました。お母さんが話す言葉を一字一句聞き逃さないように、ずっと話を聞いていました。お母さんの、徐々にニュアンスが変わっていったり、どこか自分をかばうように話す姿を見て、また新たに感情が生まれました。

役所さん:
私は監督からは「だれか嫌いな人を二、三人殺す練習をしたらどうですか」なんて言われたりはしませんでした(笑)。監督からいただいた脚本が、撮影の最終日まで変更になっていったので、監督がどの方向に私たち俳優を導いてくれるのかというのが手に取るように分かりました。それをひとつの手掛かりに、なんとかやりきることができました。

Q:劇中のセリフで、弁護士の父親である裁判官が、以下のように言うのが興味深かったです。「30年前は、犯罪の原因を社会に求める風潮があった。当時、もし有罪判決を下していれば、今回の事件は起こらなかったかもしれない」。このセリフは、日本の社会が変化してきているという事実を表現しているのでしょうか?

是枝監督:
そのセリフは僕が書いているのですが、父親が言っている通り、犯罪は社会から生まれるという考え方が、日本にも定着とは言いませんが、建前としてでも通用していた時代があったんです。しかし、いま"自己責任"という言葉が、日本ではいろんなところで使われているようになっています。「その犯罪が生まれた、社会的な、時代的な、経済的な背景を武器にして個人の責任にしていくという流れは、裁判長が口にしたような形で今の日本を覆っているのではないか」と思い、そういうものを背景として描きたいと思いました。

Q:是枝監督からの「『法廷とは真実を暴く場所ではない』と弁護士たちが言っていた」という話に関連して、作中の「誰を裁くかを決めるのかは誰か?」というセリフがキーになると感じました。これに関してコメントをいただけますか?

是枝監督:
それは広瀬すずが演じた咲江という役が、「誰を裁くかは誰が決めるんですか?」というセリフを、主人公にぶつけるという形で言葉にしました。今回はずっとこの映画を撮りながら私自身が、「人は果たして人を裁けるのか?」「法廷は誰かを裁く場所なのだろうか?」「それとも誰かを救う場所なのだろうか?」ということを考えていました。それは多分、答えがあるわけではないんです。「答えのない答えを作品を通して問う」ということが、僕は映画にとって一番誠実な監督の態度だろうと思い、その問いを問い続けました。彼女の問いにも答えはないのでしょうけれども、その問いを主人公にぶつけるという選択肢を選びました。

Q:昨夜、作品を拝見して、最後の最後まで途切れない緊張感に感銘を受けました。一つ分からなかったのは、「盲人が二人で象を触る」という挿話です。一人は耳を触っているがもう一人は別の体の部分を、というこの挿話の意図は、「真実は二つある」ということなのでしょうか?

是枝監督:
たぶん一つなんでしょうけれど、私たちのような常人には確かなものとして手にできないんじゃないんでしょうか。通常の物語だと、謎があってだんだん解けていって、犯人にたどりつくというのが王道だと思うのですが、今回は逆を行っている。シンプルな分かりやすい事件だと思っていたのが、複雑になって分からなくなっていく逆のルートをたどる作りになっています。それは決してお客さんを煙に巻こうとしているのではないんです。取材を通して出会った弁護士たちが言ってくれた、判決の後にある釈然としない感情が残る「おそらくそうであろうと思いながらも、でももしかしたら...」と思いながらも、次の裁判に行かなくてはならない、そんな弁護士が感じるもやもやとした感じ。それを今回は主人公が感じ、お客さんにも同じく感じていただくというチャレンジかもしれません。そんな着地点を目指して作りました。そして、それを楽しんでいただけたようで嬉しく思います。

Q:ドストエフスキーに影響を受けましたか?

是枝監督:
「罪と罰」は、学生時代に読んだだけなので、今回の映画を作るにあたって読み直したわけではないです。ただ頭の隅にあったかもしれませんね。影響を与えた作品の中の一つだと思います。


【フォトコール】

涼しく爽やかな風が吹く、美しい水の都イタリア・ヴェネチア。イタリアの有名ブランド、ドルチェ&ガッバーナのスーツ姿で颯爽と登場した福山雅治さん。イタリアを代表するブランド、ジョルジオ・アルマーニのスーツで貫禄の登場の役所広司さん。同じくアルマーニのドレスとプラダの靴で大人っぽい装いの広瀬すずさん。同じくアルマーニのスーツの是枝裕和監督が記者会見会場に登場。会見場は報道陣で満員(250人キャパ)大盛況、海外媒体の質問に応じました。

フォトコールでも、たくさんのメディアが集まり、「是枝!」という歓声が上がり、今や世界中で注目を集める是枝監督の最新作であり、カンヌ国際映画祭審査員賞を受賞した「そして父になる」の福山さん×是枝監督の再タッグである本作への注目度の高さが感じられました。

監督、キャスト陣は9月3日にヴェネチア入りし、たくさんの海外取材を受けるなど多忙な日々を過ごしつつ迎えた公式上映日。前日行われたプレス試写の評判も高く、本日の公式上映でどのように海外メディアから受け止められるのか、期待が高まりました。



【海外のプレスの反応】

<女性1>
すごくよかった。作品は素晴らしいし雰囲気もすごくいい。なんというかマジカルだった。すごく緊張感があって巻き込まれたわ。
――賞はどうでしょう?
そうね、いいかもね。私的にはアリだと思うわ。

<女性2>
すごくよかった。とても重要なテーマを扱っていた。この監督の作品ファンなの。今年のヴェネチアで一番の映画のひとつだと思うわ。 ――俳優はどうでしたか?
とてもよかった。みんなスクリーンでパーフェクトだったわ! 脚本もよかったし、全部よかった。

<男性1>
すごくよかった! 実際今回ヴェネチアで観た中で一番よかった。すごい物語と監督の手腕が素晴らしいと思ったよ。

<男性2>
監督がすごいね。とてもよく演出していたし脚本の出来もよかった。俳優たちもとてもよかった。

<男性二人組>
(男性A)俳優と監督のコラボとエンディングがよかった。
(男性B)全編緊張感がすごかった。それがとても重要だし、機能していた。音楽もよかった。
――俳優はどうでした?
(男性A)俳優たちはすごくよかったよ。


【レッドカーペット模様】

快晴のヴェネチア国際映画祭レッドカーペット会場。キャストと監督を一目見ようと、大勢の観客とマスコミであふれる中、レッドカーペットに登場したのは、イタリアの有名ブランド、ドルチェ&ガッバーナのタキシードとジバンシイのシャツ、クリスチャン・ディオールの靴に身を包んだ福山雅治さん、イタリアを代表するブランド、ジョルジオ・アルマーニのタキシードの役所広司さん、日本のブランド、WITH A WHITEのエレガントな白いロングドレスにイタリアのブランド、ジュゼッペ・ザノッティのハイヒールの広瀬すずさん、同じくアルマーニのタキシードの是枝裕和監督と、本作の音楽を担当したイタリア人音楽家 ルドヴィコ・エイナウディさん。広瀬さんにイタリア人女性から「カワイイー!」の声もあがるなど観客やメディアからの大歓声に応え、手を振るほか、カーペット途中ではサインを求められ、心よくそれに応じる姿も見られました。


【上映後の会場の様子】

キャパシティ約1030席が満席となる上映会場にて、是枝裕和監督が描く、緊迫感あふれるサスペンスに息をのむように引きこまれた様子の観客たち。上映終了後には、6分にも及ぶスタンディングオベーションが続き、福山さんらキャスト陣は手を振ってそれに応えました。また、是枝監督はヴェネチア国際映画祭フェスティバルディレクターであるアルベルト・バルベーラと熱い握手を交わす様子も見られました。


【囲み取材】

Q:公式上映を終えた感想は?

是枝監督:
まずは一緒に映画を作ったスタッフ、キャストとこの場に来られて、上映を一緒に経験できたことをすごく嬉しく思っています。すごくチャレンジをしている映画なので、ホームドラマを撮っている時以上に、どういう風に届けられるのか非常に気になって見ていましたし、自分自身緊張していました。今、緊張が解き放たれて脱力しているところです(笑)。いい上映だったと思います。

福山さん:
今日の会見の時も、公式上映もそうですが、監督への期待というものをひときわ大きく感じました。監督の作品を心待ちにしているファンの方、メディアの方のたくさんいらっしゃるということを感じました。その期待値が高ければ高いほど、監督のチャレンジが監督にとってのドキドキにつながっていったのだろうなと思いました。今日上映が終わった瞬間、思っていたよりも早い段階から拍手が巻き起こって、すごくいい届き方をしたなと思いました。その時、監督がちょうど隣にいたんですが、監督が僕の膝に手を置いてくださったんです。「ほっとされたのかな?」と思って僕もその瞬間ほっとしまして、うれしかったですね。まだ日本公開はしていないんですが、日本公開に向けたすごくいいスタートを切れたのではないかと思っております。おめでとうございます。

役所さん:
すばらしい上映会だったと思います。大きなアクションもなく本当に静かな映画ですが、客席からお客さんたちの背中を見ると、本当に集中してこの映画を観てくださっていることを感じました。監督には上映が終わった後、「コレいい映画ですね、誰の映画ですか?」と、言いました(笑)。ここに連れてきてもらって、自分たちが作ったものを世界中のみんなが喜んでいる姿を見ることができたので、来られなかったスタッフ、キャストの人たちには、素晴らしい上映会で、みんなが楽しんでくださったことを伝えたいなと思います。

広瀬さん:
上映中の空間は、本当に言葉で表すことができないくらい緊張感にあふれていました。この時間を味わえ、ステージに立ち、一緒に参加できたことを、本当に心から嬉しく思っています。

Q:館内のお客様の反応はいかがでしたか?

是枝監督:
(お客さんの背中が)身動きをされないので、集中して観てくれているのが分かりました。なので、こっちもずっと緊張していました。時々、吉田さんのシーンと、橋爪さんのシーンでフッと緩むときはあるんですが、笑いが起きるわけではなく、ほとんど二時間緊張しっぱなしなので、心地よい疲れと、この謎に向かっていく物語を考えることを楽しんでくれたような気がします。

福山さん:
僕は海外でのこういう上映会を経験することは、まだとても少ないんですが、割と作品に集中して観ることができたなと思いました。一瞬、「海外で上映しているんだ」ってことを忘れてしまったり、今日ヴェネチアに来ていることを忘れてしまうくらい、作品に引き込まれました。これは、監督が新しいトライ、チャレンジをした作品の持つ力だと思います。もちろん緊張感はあるんですが、「どういう反応かな?」っていうことを忘れて、このヴェネチアで一観客として引き込まれたのは、すごく力のある作品だからじゃないかなと思いました。

役所さん:
笑いや驚きは起きないんですが、静かな中でも息を詰めている瞬間や、深く息をしているのが分かりました。あれだけの会場で、あれだけの人間が同じ呼吸をするとすごいんだなと思いました。張り詰めた中でも、映画がドラマチックにぐらっと動く瞬間というものが、お客さんのほうから感じられた気がします。

広瀬さん:
どこか緩む雰囲気や、三隅さんの目や、重盛さんの言葉が、言葉が違うとしても、いろいろなものを超えて、伝わるものが本当にあったんだなと思いました。終わった後の監督の表情を見て、私もちょっと気が緩みました。

是枝監督:
今日一日ずっと取材を受けて、公式上映に参加して、一番忙しい一日でした。正直22年前の記憶がほとんどないものですから、初めてに近い経験をここでしています。あまり好きな言葉じゃないですが、僕を発見してくれた映画祭ですし、ここでのデビュー作での経験がなかったら、多分今こんな風に映画を撮れていないと思います。22年分とは言わないまでも、成長した姿を、またここで見せることができたかなと思っています。

Q:カンヌ、ベルリンと並び世界三大映画祭と言われる、このヴェネチア映画祭に参加されたご感想を改めて教えてください。

福山さん:
大変光栄な瞬間に立ちあえたなと思っています。今回の映画はやっぱり監督のチャレンジですよね。監督のチャレンジを側で見ていて、監督の緊張感、そして映画が終わった後の安堵、深い呼吸がやっとできたという感じが伝わってきました。それをこの国際的な映画祭で体験したということが、もう四年ぶりですが、すごく嬉しかったですね。

役所さん:
僕たちがお客さんと一緒に観ているから、ああやって拍手してくれているのかもしれないですが、嬉しいですよね。普段、お客さんと観ることはこういう機会でしかないです。こういう映画祭に来て、お客さんと観て、お客さんが拍手してくれたり「よかったよ」って言ってくれるっていうのは、こういうところでしかできない体験です。今回も温かく拍手を送ってくださったので、また頑張って映画作りに参加したいという勇気をもらいます。

広瀬さん:
ニ、三年前くらいに監督とカンヌに行った時とは違う色や音に触れることができました。本当に、生のリアクションをそのままもらえると、すごく喜びやエネルギーになり、「また頑張ろう!」って思える力になります。こういうところでしか感じられないものは私にとってすごくたくさんあるので、その時間を今回は楽しもうと思いました。

Q:海外取材をたくさん受けられているかと思いますが、今までの是枝監督作と違う風にとらえられている感じはありますか?

是枝監督:
日本でとらえられている以上に、海外だと僕はホームドラマの作家なので、「大きく作風を変えたのはなぜか?」ということを、最初の質問で聞かれるんです。もちろん、ホームドラマとは違う社会的なものということで、少し視野を広げて作っているつもりなんですが、作っている人間は変わらないので、見えているほどには変えている意識は実はないんです。でも、それは継続して観てくれていることの証なので、ありがたいことです。前の作品との比較の中で、この作品をどういう風に、僕の新作として位置づけようかっていう戸惑いも含めて、悩んでいるみたいで面白かったですけれどね。いい意味で裏切れてよかったと思います。

Q:今まで描いてきた家族よりのストーリーに比べて、社会派というか社会のダークな面を描いていますが、何かたまっていたものが今炸裂したのでしょうか(笑)?

是枝監督:
この間に人間不信になる出来事が自分にあったわけではないんですが(笑)。今回は本当に、現役の弁護士さんと一緒に脚本を作っているところもあるので、かなりシビアな彼らの仕事と彼らが向き合う"かぎかっこ付きの真実"っていうものを、どういう風に僕自身もこの物語を通して向き合うかという挑戦でした。決して、「真実なんて分からないんだ、分からなくていいんだ」っていう映画だとは思っていないので、そこはそんなにネガティブには自分ではとらえていないんです。

Q:屈指の観光地ヴェネチアですが、滞在されていかがですか?

広瀬さん:
船での移動の間、海の上から街を見たり、建物を見たり、すごく癒されていました。

Q:是枝監督はカンヌの常連ですが、今回はなぜヴェネチアだったんでしょうか? ヴェネチアへの想い、選択の理由を教えてください。

是枝監督:
いろんな理由があるのですが、今の映画祭ディレクターのアルベルトさんとはもう17、18年前からのお付き合いでして、常に僕の作品を評価してくださる方なんです。彼はしばらくヴェネチアを離れていたんですが、戻られてからはやっぱりどこかのタイミングでアルベルトに僕の作品を...という思いはありました。ただ、どうしても作品を売っていくうえでカンヌを優先するということがエージェントの考え方としてもありますし、そちらを優先する方向で、ここ10年ぐらい動いていたんです。今回はたまたま完成時期も六月を超えていましたし、自分としては「選んでいただけるのであれば、ヴェネチアで」というのは思っていました。

Q:「羅生門」との共通点は?

是枝監督:
ヴェネチアだから「羅生門」ってことは全然ないんです(笑)。ただ、サスペンスとはいえ、謎が解かれて真実にたどり着く映画ではなく、まったく真逆の道をたどる映画ですから、そういう意味では羅生門が一番モデルとして参考にはなりました。

Q:受賞の手答えは?

是枝監督:
簡単に人に届く映画ではないと思うので、自分でもよくこの題材でこういうチャレンジをこのキャスト・スタッフでやったなという思いです。そう意味では「頑張ったなあ」という感じですね。これを観た方がどう感じてくださっているかは、感触を探っているところです。「ホームドラマの作家」だと思って観に来てもらった人たちにとっては、いい意味でも悪い意味でも戸惑いはあるでしょうし、サスペンスだと思って観に来た人たちにとっても、いい意味でも悪い意味でも「え!?」という感じがあると思います。でも、両方とも狙ってやっていることだから、その辺はかなり天邪鬼なんです。そういう意味では狙ったところには届いていると思っています。それがどう評価に関わるかについては分からないです。

Q:授賞式は楽しみですか?

是枝監督:
それはもちろん。それについては答えないようにしているので、答えないですが(笑)。もちろん評価につながったほうが作品にとってはうれしいことですし、スタッフもキャストも喜んでくれることだと思います。

Q:役所さん演じる三隅は何度も殺人を犯しているとは思えない、静ひつで優しさを感じさせる役でした。役所さん自身はどのようにお考えですか?

役所さん:
僕は誰も殺していないです(笑)。今日二度目の鑑賞だったんですが、やっぱり映画って一回じゃ見切れないんですよね。すごく新しい発見があったり、「こういう映画だったんだ!」と全然違った見方ができました。監督は死刑制度に関して、大きな声で反対する映画にはしないとおっしゃっていましたが、やっぱり考えさせられる映画でしたね。人を裁くってどんなことか、二回目はまた違った形で映画を楽しませてもらいました。

Q: 福山さん、カンヌでは涙を流されていましたが、今日は笑顔でしたね?

福山さん:
「何で泣かないんだ?」と言いたいんですか(笑)? ヴェネチア映画祭という国際的な舞台で一人の観客として楽しめたんですよね。前回のカンヌの経験から、また欲張りな楽しみ方をしようとしたのかもしれません。めったにこういう経験はできないので。制作過程を知っている人間が、この場でこの映画を一観客として楽しむことはすごく贅沢なことなのかもと思い、そういう風な楽しみ方をしていたのかもしれません。

Q:「監督がチャレンジをされた」といった言葉から、監督へのリスペクトを感じますが、ご自身にとっては今回はどんなチャレンジでしたか?

福山さん:
監督がチャレンジするということは、必然的に僕や出ているキャストがチャレンジをすることになり、スタッフがチャレンジすることにもなりました。撮影監督の瀧本さんも新しい提案をされていましたし、シネスコというスタイルで撮るため、照明や美術や全てのスタッフがチャレンジをしていました。でも、監督と同じことやってるよってことは多分ないと思うんです。監督の勇気に導かれて、自分も何か新しいものを得ることができているのかもしれないです。

Q:ご自身の安堵感について。

福山さん:
上映後、僕も安堵しかけたときに、監督の手が僕の膝に来て「監督が安堵されている!」と思いました。でも、それが一番嬉しいことなんですよね。さっき移動の車ですずちゃんと話していたんですが、すずちゃんも「監督のあんな姿初めて見た」と嬉しそうなんですよ。「監督はやっぱりすごく可愛いよね」ということでした。すみません、なんか恥ずかしいですよね(笑)

東宝website